派遣社員の残業代は派遣元・派遣先どっちが払う?自社で支払わないといけないの?

こんにちは!
埼玉県新座市の助成金に強い「福田社会保険労務士事務所」代表の福田です!
本日は、過去にご相談があった事例について、ご覧の皆様にもお役立ていただくために、Q&Aをお届けしたいと思います。
社労士 福田過去のご相談事例を、
皆様の労務管理にも
お役立ていただけたら幸いです!
ご相談内容はこちらです。
Q:弊社では派遣会社から派遣社員を使用しています。
この派遣社員が残業した場合、残業代は派遣会社か弊社のどちらが支払なければいけないのでしょうか?
結論からお伝えすると、派遣社員の残業代を支払うのは、雇用主である派遣会社(派遣元)です。派遣先の企業が本人に直接支払う必要はありません。

図1:派遣の三角関係(雇用関係は派遣元、指揮命令関係は派遣先)
ただし、派遣先にもかかわりのある注意点があります。36協定や労働者派遣契約の範囲、そして残業代の原資が派遣料金として実質的に派遣先の負担になっている点です。順番に見ていきましょう。
新人人事部 S郎これは確か派遣元が
支払わないといけないんじゃ
なかったですかー?
社労士 福田よくご存知でしたね!
残業代の支払いに加えて
他にも注意点を解説します!
派遣社員の残業代は派遣元(派遣会社)が支払う
この章では、残業代の支払い義務が派遣元・派遣先のどちらにあるかを整理します。ポイントは、雇用関係と指揮命令関係の違いです。
A:派遣社員に関しては、雇用関係が派遣会社(以下、派遣元)にあり、派遣先である御社には指揮命令関係があるのみとなります。
このことから、残業代に関しては派遣元で支払う必要があり、派遣先で支払う必要はありません。
参考:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号) 第四十四条」(第37条など賃金関係の規定は読み替え対象外のため)
残業代の計算も、派遣元が雇用契約で定めた時給などの賃金をもとに行います。割増賃金率は正社員と同じで、次のとおりです。
| 労働の種類 | 割増率 | 補足 |
| 時間外労働(法定労働時間の1日8時間・週40時間を超えた分) | 25%以上 | 時給1,200円なら1,500円以上 |
| 時間外労働のうち月60時間を超えた部分 | 50%以上 | 現在は中小企業も対象 |
| 深夜労働(22時〜5時) | 25%以上を加算 | 時間外と重なると合計50%以上 |
| 法定休日の労働 | 35%以上 |
参考:東京労働局「しっかりマスター 割増賃金編」
この計算と支払いを行うのも、あくまで派遣元です。
なお、派遣社員本人から残業代について問い合わせがあった場合も、窓口となるのは雇用主である派遣元です。派遣先は、実際に働いた時間を正しく把握して派遣元に伝える役割を担いますので、タイムカードなどの勤怠記録を適正に管理しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
残業に必要な36協定も派遣元が締結・届出する
残業といえば残業代だけでなく、36協定も必要になってきます。
この36協定についても、派遣元において締結・届出がされていなければなりません。
36協定の詳細につきましては、過去のこちらの記事をご参照ください。

一点、注意が必要なのは、時間外労働の上限規制(原則として月45時間・年360時間)との関係です。
実際に指揮命令をして働かせているのは派遣先のため、上限を超えて残業させた場合に責任を問われるのは派遣先となります。これは、労働者派遣法第44条第2項により、労働時間や休日など労働基準法の一部の規定について、派遣先を使用者とみなして適用すると定められているためです。
参考:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号) 第四十四条」
派遣社員に残業を命じる前に、派遣元が締結した36協定の限度時間を確認しておくと安心です。
派遣先が残業を命じられるのは労働者派遣契約の範囲まで
残業代の支払い義務も36協定も派遣元に義務あるからといって、派遣先は自由に残業をさせられるわけではありません。
労働者派遣契約において定めている労働時間に限られますので、その点は十分にご注意ください。
派遣社員に残業をお願いする可能性がある場合は、労働者派遣契約書に時間外労働の定めがあるか、何時間まで可能かを事前に確認しておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号) 第二十六条」
残業代のお金の流れは?原資は派遣料金として派遣先が実質負担
この章では、残業代のお金の流れを整理します。派遣先が本当に確認しておきたいのは、本人への支払いではなく、派遣会社との精算方法です。
残業代を派遣社員に支払うのは派遣元ですが、お金の流れを見ると、派遣先も無関係ではありません。派遣先は派遣元に派遣料金を支払っており、残業が発生した場合は、残業時間分の派遣料金が割増の単価で請求されるのが一般的です。

図2:残業代のお金の流れ(原資は派遣料金として派遣先が実質負担)
派遣会社との精算方法チェックリスト
つまり、残業代の原資は、派遣料金というかたちで派遣先が実質的に負担しています。だからこそ、請求書が届いてから慌てないように、次の点を確認しておきましょう。
- 労働者派遣契約書や個別契約書に、残業時間分の請求単価(割増率)が定められているか
- 残業時間を何分単位で集計するかが取り決められているか(本人への賃金は1分単位が原則です)
- 請求書に記載された残業時間が、自社で把握している勤怠記録と一致しているか
このあたりを押さえておくと、派遣会社からの請求額が適正かどうかを自社で判断しやすくなります。
新人人事部 S郎残業代は派遣元が払うと聞いて
安心していましたが、結局は派遣料金
として自社も負担しているんですね!
社労士 福田そうなんです!だからこそ、
派遣契約と請求の中身は確認して
おきたいポイントなんですよ!
よくある質問
- 派遣社員から「残業代が支払われない」と相談されました。派遣先はどう対応すればよいですか?
-
支払い義務は派遣元にあるため、まずは派遣元に事実を伝えましょう。派遣先としては、実際の労働時間を正しく派遣元へ連絡できているか、勤怠記録を確認してください。未払いのまま放置されると、職場への不信感やトラブルにつながる可能性があります。
- 派遣社員には何時間まで残業をさせられますか?
-
派遣元が締結した36協定の限度時間と、労働者派遣契約で定めた時間の、両方の範囲内に限られます。どちらか一方でも超えることはできません。
- 派遣社員の残業代の割増率は、正社員と同じですか?
-
同じです。派遣社員にも労働基準法が適用されるため、時間外労働は1.25倍以上(月60時間を超える部分は1.5倍以上)、深夜労働はプラス25%、法定休日の労働は1.35倍以上の割増賃金となります。
派遣社員の残業代は派遣元が支払い、派遣先は契約と協定を確認
最後に、この記事で見てきた派遣元・派遣先の役割分担を一覧にまとめます。
| 項目 | 派遣元(派遣会社) | 派遣先(自社) |
| 残業代の支払い | 支払う(雇用主として計算・支給) | 本人への支払いは不要 |
| 36協定の締結・届出 | 締結・届出を行う | 限度時間を確認しておく |
| 上限規制を超えた場合の責任 | ― | 責任を問われる(派遣法44条2項) |
| 残業を命じられる範囲 | 労働者派遣契約で定める | 契約の範囲内でのみ命じられる |
| 残業分のコスト | 本人へ残業代を支払う | 派遣料金として実質負担・精算方法を確認 |
新人人事部 S郎残業といえば36協定ですね!
労働者派遣契約についても、
とても勉強になりました!
社労士 福田派遣については「労働者
派遣法」という法律が
ありますので、そちらも
しっかりと把握しておく
必要がありますよ!
派遣社員の残業代は派遣元が支払いますが、36協定の限度時間、労働者派遣契約の範囲、派遣料金の精算方法など、派遣先として確認しておきたいポイントは少なくありません。
自社の契約内容や労務管理に不安がある場合は、早めに専門家へ相談すると安心です。
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