労務手続きの際に必要となる「賃金支払基礎日数」とは??

こんにちは!
埼玉県新座市の助成金に強い「福田社会保険労務士事務所」代表の福田です!
新座市、朝霞市、志木市、和光市の中小企業様の顧問先企業様を中心に、労務相談や給与計算、経営相談まで幅広くサポートさせていただいております。
本日のテーマは、雇用保険や社会保険の手続きの際に必要となる「賃金支払基礎日数」について解説していきたいと思います。
新人人事部 S郎たしか、雇用保険の離職の
手続きの時に必要になるもの
ですよねー?
社労士 福田さすがS郎さんですね!
あとは社会保険においても
使いますよ!
賃金支払基礎日数とは、従業員に支払う賃金や報酬を計算するための基礎となる、支払対象日数のことをいいます。離職票の記入時にも、算定基礎届の届出時にも使われる数字で、正社員だけでなくパートやアルバイトにも関係してきます。
有給休暇は含まれるのか、欠勤があったらどうするのか、育休中はどう扱うのかなど、実務で迷いやすいポイントも多いので、本記事では給与形態別の数え方から注意点まで、まとめて解説していきます。
賃金支払基礎日数とは? 給与計算や手続きで必要になる2つの場面
賃金支払基礎日数とは、従業員に支払う賃金や報酬を計算するための基礎となる、支払対象日数のことをいいます。
この「賃金支払基礎日数」は、以下の2つの場面で用いられるため、正しく算出することが重要です。
雇用保険の受給資格を確認する場面(11日以上ルール)
まず1つ目は、雇用保険の資格喪失手続き、つまり従業員が退職するときの場面です。
失業時の求職者給付(いわゆる失業保険=基本手当)の受給資格は、原則として「離職日以前の2年間に、被保険者期間が12ヵ月以上あること」とされています。
この被保険者期間をカウントするときに賃金支払基礎日数が使われ、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を「1ヵ月」として計算します。逆にいえば、11日未満の月は被保険者期間としてカウントされません。
離職票や離職証明書を作成する際にもこの数字を記入する必要がありますので、正確に把握しておくことが大切です。
2 離職証明書(離職票)の作成について
(1)基本事項
・「離職日を基準とした1ヶ月単位の期間」に賃金支払基礎日数(賃金を支払う対象の日)が
「11日以上ある月」について、直近12ヶ月分(65歳以上の離職者は6ヶ月分)を記入
して下さい。
・「賃金締切日を単位とした期間」に賃金支払基礎日数が「11日以上ある月」について、
直近6ヶ月分を記入して下さい。
・記入が可能となる算定対象期間(記入が可能な上限期間)は、離職日から遡った2年間
( 65歳以上の離職者は1年間)までです。
・傷病、出産、育児、介護を理由に30日以上賃金支払いがない場合は、上記の算定対象期間
を延長することができます。
・離職の理由、経緯について、可能な範囲で具体的に記入をお願いします。
・記入内容の確認資料(出勤記録、賃金台帳、雇用契約書、退職願など)の添付が必要です。
なお、2020年8月の法改正により、賃金支払基礎日数が11日未満であっても、賃金支払いの基礎となる労働時間が80時間以上ある月は被保険者期間に含められるようになりました。時給制やパートの方は日数だけでなく労働時間も確認しておくと安心です。
(改正後)
離職日から1か⽉ごとに区切っていた期間に、賃⾦⽀払の基礎となる日数が11日以上ある月、または、賃⾦⽀払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1か月として計算。
※上記は一般的な失業保険の受給資格について記載しており、特定受給資格者など例外のパターンもあります。
社会保険料の標準報酬月額を決める場面(17日未満ルール)
2つ目は、社会保険料の計算で用いる標準報酬月額を決めるとき、いわゆる定時決定(算定基礎届)の場面です。
定時決定では、4月から6月までの3ヶ月間の報酬をもとに標準報酬月額を算出しますが、もしこの3ヶ月間の賃金支払基礎日数が17日未満の月がある場合には、その月は計算から除外しなければなりません。
・一般的な被保険者の標準報酬の決定方法
報酬の支払基礎日数は、17日以上の月を対象とし、17日未満の月については、標準報酬月額の計算から除くこととなっています。
4月、5月、6月の支払基礎日数 標準報酬月額の決定方法 3カ月とも17日以上ある場合 3カ月の報酬月額の平均額をもとに決定 1カ月または2カ月が17日以上で、
他は17日未満の場合17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 3カ月とも17日未満の場合 従前の標準報酬月額で決定
新人人事部 S郎定時決定はやったことが
あるので、分かります!
たしかに使いますね!
社労士 福田よく思い出してくれましたね!
定時決定については、以前の
こちらの記事をご覧ください。
賃金支払基礎日数の根拠となる「法定三帳簿」の整備も忘れずに
賃金支払基礎日数を正しく算出するためには、その根拠となる記録が日頃から正確に整備されていることが前提になります。
労働基準法では、事業主に対して「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つの帳簿(法定三帳簿)の作成・保存が義務づけられています。賃金台帳には労働日数や労働時間数、賃金の種類ごとの金額などが記載されますし、出勤簿には従業員の出退勤の記録が残ります。
4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
(4)賃金台帳の適正な調製
使用者は、労働基準法第 108 条及び同法施行規則第 54 条により、労働者ごと
に、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時
間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。
また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚
偽の労働時間数を記入した場合は、同法第 120 条に基づき、30 万円以下の罰金
に処されること。
労働基準監督署の調査(いわゆる労基署調査)が入った場合には、法定三帳簿の提出を求められることがあります。帳簿の不備や記載漏れがあると是正指導の対象になりますし、賃金支払基礎日数の計算根拠が説明できない状態はトラブルの元にもなりかねません。
また法定三帳簿の保存期間は、労働基準法第109条により原則5年間と定められています(経過措置として当面の間は3年間)。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。第百四十三条 第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。
出典:労働基準法第109条 、第143条| e-GOV法令検索(令和7年6月1日 施行 )
退職した従業員の分も含め、保存期間内は適切に管理しておきましょう。
賃金形態別の賃金支払基礎日数の正しい数え方
それでは、賃金支払基礎日数の具体的な計算方法を見ていきましょう。支払基礎日数の数え方は賃金形態によって異なり、大きく3つのパターンに分けられます。あなたの会社の給与形態はどれに当てはまるか、確認しながら読んでみてください。
完全月給制の場合(暦日数がそのまま基礎日数)
完全月給制とは、1ヵ月の賃金が固定されていて、もし欠勤等をしたとしても欠勤控除がされない賃金形態です。
この場合は、欠勤日も含めて暦日数がそのまま賃金支払基礎日数となります。たとえば4月であれば30日、5月であれば31日です。
日給月給制の場合(規定日数から欠勤日数を引く)
日給月給制とは、1ヵ月の賃金は決まっていますが、欠勤等をすると欠勤控除がされる賃金形態です。
この場合の計算式は、一般的に以下のとおりです。
たとえば所定労働日数が22日の会社で2日欠勤した場合は、「20日」が賃金支払基礎日数になります。
ここで注意していただきたいのは、暦日数(その月の日数)から欠勤日数を引くのではないという点です。あくまで就業規則等に定めた規定の日数から引きますので、間違えないようにしましょう。
ちなみに、フレックスタイム制を採用している場合も、基本的にはこの日給月給制と同じ考え方が適用されます。また、締め日が月末ではない場合(例:15日締めなど)は、締め日に応じた期間で集計する点にもご注意ください。
時給制・日給制の場合(パート・アルバイトの出勤日数)
時給制や日給制とは、パートやアルバイトによく用いられる賃金形態で、1時間や1日あたりの単価が決まっており、働いた時間や出勤日数に応じて賃金が支払われます。
この場合は、出勤した日数がそのまま賃金支払基礎日数になります。
中小企業ではパートやアルバイトを雇用されているケースが多いかと思いますので、このパターンもしっかり押さえておいてください。
新人人事部 S郎賃金形態によって計算方法が
違うのは注意が必要ですね。
うちはパートさんもいるので
気を付けます。
社労士 福田よく確認してくださいね!
その他にも注意点があるので
お伝えますね!
賃金支払基礎日数の計算で注意すべき5つのポイント
上記の賃金形態以外にも、賃金支払基礎日数の計算方法にはルールがあり、間違って計算するとトラブルになってしまうこともあるので注意が必要です。
以下の5つのポイントについて、ご注意ください。
① 土日祝日・公休日の扱い
日給制や時給制の場合、土日祝日に働いた日数は含めて計算しますが、土日祝日が休みというときには賃金支払基礎日数に含めません。
一方、完全月給制や日給月給制の場合は、土日祝日に働いたかどうかは関係なく、完全月給制であれば暦日数、日給月給制であれば規定の日数をもとに計算します。
つまり、賃金形態によって土日祝日の考え方が異なるという点に注意してください。
② 欠勤控除が適用される場合の計算ルール
欠勤控除を適用する場合には、就業規則等に基づく規定の日数から欠勤日数を引いて計算します。
よくあるミスとして「暦日数から欠勤日数を引いてしまう」というケースがありますが、これは誤りです。暦日数ではなく、あくまで規定の日数から引くということを覚えておいてください。
③ パート・アルバイトと「17日未満」ルール
先ほどお伝えしたとおり、時給制や日給制の場合は出勤日数がそのまま賃金支払基礎日数となりますが、標準報酬月額を算出するとき(定時決定)に、4月から6月の賃金支払基礎日数が17日未満になった月は除外して計算しなければなりません。
パートタイマーの方は出勤日数が月によってばらつきやすいため、この17日ルールに該当しやすいので注意してください。
なお、雇用保険では「労働時間80時間以上」という補完的な基準がありますが、社会保険の標準報酬月額の算出にはこの80時間ルールは適用されません。あくまで17日以上の日数が必要になりますので、混同しないようにご注意ください。
また、パートタイマーなど短時間で働く方については、算定基礎届の計算にあたって以下のような特例基準が設けられています。
・短時間就労者の標準報酬の決定方法
短時間就労者とは、パートタイマー、アルバイト、契約社員、準社員、嘱託社員等の名称を問わず、正規社員より短時間の労働条件で勤務する方をいいます。
短時間就労者の定時決定は、次の方法により行われます。
4月、5月、6月の支払基礎日数 標準報酬月額の決定方法 3カ月とも17日以上ある場合 3カ月の報酬月額の平均額をもとに決定 1カ月または2カ月が17日以上で、
他は17日未満の場合17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 3カ月とも15日以上17日未満の場合 3カ月の報酬月額の平均額をもとに決定 1カ月または2カ月が15日以上17日未満で、
他は15日未満の場合15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定 3カ月とも15日未満の場合 従前の標準報酬月額で決定
※特定適用事業所等に勤務する短時間労働者(社会保険の適用拡大の対象者)の場合は、11日以上の月を算定対象とします
パートさんが多い会社では、この特例も押さえておくと安心です。
④ 有給休暇・特別休暇は含まれる
年次有給休暇や、会社が定めた特別休暇といった「使用者から賃金が支払われる」休暇日については、賃金支払基礎日数に含まれます。
「休暇なのに含まれるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃいますが、賃金が発生している日はカウントの対象になるということを覚えておいてください。
※厚生労働省の離職証明書記載例においても、有給休暇は賃金支払基礎日数に算入し、半日でも1日として計算すると案内されています。
⑤ 休職・産休・育休は含まれない
休職や産休・育休を取得した場合ですが、業務外の病気や事故が原因で休職をした場合には、その期間についての賃金が支払われないため、賃金支払基礎日数にはカウントされません。
また、産休・育休も賃金支払基礎日数として計上されないことになっていますので、ご注意ください。
育休から復帰して短時間勤務をしている方については、その勤務実態に応じた日数で計算することになります。育児休業給付金との関係については、また別の記事でご案内いたします。
新人人事部 S郎少し曖昧な所があったけど、
これでバッチリです!!
社労士 福田S郎さんのお役に立てて、
私も嬉しいですよ!
よくある質問
計算ミスを防いで正しい手続きにつなげよう
最初にお伝えしたとおり、賃金支払基礎日数は失業保険の受給資格や社会保険料の標準報酬月額の計算に用いられるため、大変重要なものになります。
計算ミスがあるとトラブルとなる恐れがありますので、十分ご注意ください。
もし計算方法に不安がある場合は、ハローワークや年金事務所に問い合わせて確認することもできます。また、当事務所でも労務に関するご相談を随時お受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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