三次会でのセクハラ!初の労災認定

こんにちは!
埼玉県新座市の助成金に強い「福田社会保険労務士事務所」代表の福田です!
新座市、朝霞市、志木市、和光市の中小企業様の顧問先企業様を中心に、労務相談や給与計算、経営相談まで幅広くサポートさせていただいております。
本日のテーマは、飲み会の場での労災についてです。
事件の実例を見ながら、社労士目線で解説していきます。
今まであいまいな部分が多かった、二次会・三次会での労災認定。
今回は初めて労災認定に至った事件をもとに解説していきます!
三次会の飲みの場で起きたセクハラ事件

あるIT企業で起きた、出張中の二次会・三次会をめぐる事例をご紹介します。
30代の女性社員が東京出張の際、会社主催の懇親会に続いて、支社長に誘われるまま二次会、さらに三次会の「ガールズバー」へと同行しました。
その店内で、上司である支社長から女性店員との不適切な接触を強要されるなどの深刻なハラスメントを受け、彼女は後に適応障害を発症してしまいます。
彼女はこれを労災として申請しましたが、労働基準監督署の判断は厳しいものでした。
労働基準監督署は「深夜の三次会への参加はあくまで個人の意思によるもので、業務ではない」として、労災を認めなかったのです。
労災と認定されるためには、その時間が「会社の支配下にある(業務遂行性がある)」と認められる必要がありますが、役所は「ガールズバーでの時間は、もう仕事の範疇を超えたプライベートな遊びの時間である」と判断したわけです。
これを受け、女性は労災を認めなかった国の処分の取消を求め大阪地裁に提訴していました。
判決では「3次会への出席は出張の行程に組み込まれたものであり、誘いを断るのは困難だった」と認定し、事業主の支配下にあったとして労災認定を認めたのです。
労災とはなにか
まず、この事件で争われた点を理解するために労災について説明します。
労災保険は、労働上の事由または通勤に起因する病気や怪我に対して必要な保険給付を行い、被災労働者の社会復帰や遺族の支援、労働者の安全・衛生の確保を目的とした制度です。

健康保険との違い
労災保険と健康保険の最大の違いは補償の対象で、労災保険は仕事中や通勤中のケガ・病気を、健康保険はそれ以外の業務外のケガ・病気をカバーします。
労災が原因なら労災保険を使い、健康保険は使えません。
併用はできない決まりとなっています。

被保険者である労働者が窓口で支払わなければならないお金も、労災であれば100%負担なしですが、健康保険使用であれば基本的には30%の自己負担が必要になります。
労災認定=「多額の賠償リスク」

労災が認定されるということは、「100%会社の落ち度でこのような事態に陥った」と会社が認めるということです。
これにより、会社は以下のような甚大なリスクを負うことになります。
- 損害賠償請求(民事上の責任): 労災給付ではまかなえない「慰謝料」などを求めて、被害者から民事訴訟を起こされる可能性が高まります。
- 使用者責任(民法715条): 部下が起こした不祥事に対し、会社も連帯して責任を負わなければなりません。
- 社会的信用の失墜: 「ハラスメントを放置し、労災認定された企業」という企業やブランドに関する悪い評判が企業の価値を落とし、採用活動や取引にも悪影響を及ぼします。
つまりその怪我や病気が「業務が原因」なのか「業務は原因ではない」のかについて明白にすることは非常に重要なのです。
労災認定に至った要因
通常二次会・三次会は私的な場として認識されます。
そのためタイトルにもある通り、労災と認定されたのは今回が初めてのことでした。
ではどの点が今までと異なっており、認定されるに至ったのでしょうか。
今回の事件では下記3点が重要視されました。
断ることが困難だった点がキーとなった
業務遂行性とは、簡単に言うと「労働者が事業主の支配・管理下にある状態」を指します。
実際の業務についている状態はもちろん、出張のために移動している場合もこれに当たります。
例えば、「工場で機械の操作中に手を挟んで怪我をした」場合や、「営業担当者が直行直帰の途中で、顧客先へ向かうために歩いている最中に交通事故に遭った」場合があります。
今回の事件に関しても、女性社員の登用に影響力を持っていた上司が「予定を開けておけ」と指示したこと「スケジュールに組み込まれていた」ことから、「労働者が事業主の支配・管理下にある状態」だと認定されました。
スタッフ奥田キャリアを左右する
人からの指示は聞かなきゃ
ダメって思っちゃいますよね
トラブルを事前に防ぐためには
年末年始は会社のイベント事が増える季節です。
事故やトラブルが発生しないに越したことはありませんが、事前に明記したり明確にアナウンスしたりすることが重要になってきます。
労災になるようなトラブルに発展させないために、社長や管理職の立場の方は下記の点に注意する事も検討してみてください。
自由参加であることを強調する
会社の飲み会、二次会・三次会は社員が自由な意思で集まるものであり、強制参加ではないことを明確にします。
業務でなくコミュニケーションの場であると明記する
業務とはまったく関係がなく、従業員同士のコミュニケーションの場であることをあらかじめ伝えておくことも重要です。
評価には関わらない旨を明記する
これはなかなか明記しにくい内容ですが、今回の事件が労災と認められた要因の一つに評価者からの加害だったことがあげられます。
飲み会の場が今後のキャリアに影響がないことを明確にしておくこともトラブルに発展されない方法だと考えられます。
スタッフ奥田会社としては
線引きをしっかり
行うことが大事なんですね…
上記のような予防策を講じても、何よりも重要なのは社員それぞれの意識です。
セクハラやパワハラが当然起きない職場環境作りが欠かせません。
まずはハラスメント対策の実施を検討されてみてはいかがでしょうか?


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