出向社員の労働保険・社会保険は、出向元と出向先のどちらで加入すれば良いの??

こんにちは!
埼玉県新座市の助成金に強い「福田社会保険労務士事務所」代表の福田です!
本日は、過去にご相談があった事例について、ご覧の皆様にもお役立ていただくために、Q&Aをお届けしたいと思います。
出向社員の保険の手続きを行う会社は、保険の種類ごとに分かれます。労災保険は実際に働く出向先、雇用保険と社会保険(健康保険・厚生年金保険)は主たる賃金を支払う会社が、加入と手続きを行うのが原則です。
この記事では、在籍出向を受け入れる場合や送り出す場合に、どちらの会社で加入し、誰が保険料を負担し、どのような手続きが必要かを、保険ごとに順番に整理します。
社労士 福田過去のご相談事例を、
皆様の労務管理にも
お役立ていただけたら幸いです!
労働保険・社会保険の取扱い
ご相談内容はこちらです。
Q:弊社において近々、在籍出向を受け入れる予定がございます。
このような場合、労働保険や社会保険の加入については、どのような取り扱いになるのでしょうか?
新人人事部 S郎うちでは出向とかないので、
全然検討も付かないです。。
社労士 福田出向がある会社自体が
少ないので、分からなくても
無理はないですよ。
一緒に見ていきましょう!
A:そもそも出向というのは、出向元・出向先の両方に雇用関係を持っているので、少し難しいですよね。保険毎に取り扱いが異なりますので、詳細をお伝えさせていただきます。
はじめに、3つの保険の取り扱いを表で整理します。
- 労災保険
- 雇用保険
- 社会保健(健保・厚年)
| 加入する会社(原則) | 保険料の負担 | 判断の基準 | 主な手続き | |
|---|---|---|---|---|
| 労災保健 | 出向先 | 出向先が申告・納付 | 実際に働いている場所 | 出向先で労働保険料を申告・納付 |
| 雇用保険 | 主たる賃金を支払う会社 | 加入する会社(賃金を支払う側) | 賃金の主な支払い元 | 出向元か出向先で資格取得・喪失 |
| 社会保険(健保・厚年) | 主たる賃金を支払う会社 | 加入する会社(賃金を支払う側) | 賃金の主な支払い元 | 出向元か出向先で資格取得・喪失(両社から賃金が出る場合は二以上事業所勤務届) |
労災保険の取扱い
まず、労災保険ですが、こちらは現実に労働力を提供している方で適用されます。
つまり、業務を行う場所である出向先の会社で加入します。
仮に、賃金が出向元で全額支払われる場合や、出向元と出向先の両方から支払われる場合でも、出向先から支払われるものとして、労災保険料の申告・納付などを行います。
参考:厚生労働省 昭和35年11月2日 基発第932号「出向労働者に対する労働者災害補償保険法の適用について」
雇用保険の取扱い
次に雇用保険についてですが、こちらは主たる賃金を支払う方で加入します。
そのため、出向先で賃金が支払われる場合は出向先で、出向元で賃金が支払われる場合は出向元で、加入の手続き(資格取得)を行います。
出向元と出向先の両方から賃金が支払われる場合には、主たる賃金を支払う方で資格取得を行います。
参考:厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領」
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の取扱い
最後に社会保険ですが、こちらも雇用保険と同じ考え方で、主たる賃金を支払う方で加入します。
ひとつ取り扱いが異なるのは、出向元と出向先の両方から賃金を支払う場合です。この場合は、次の流れになります。
- 出向元の被保険者資格はそのまま継続し、出向先でも資格取得の手続きを行います。
- このとき「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実が発生した日から10日以内に、被保険者本人が提出します。会社が出す届書ではなく、本人が届け出る点に注意してください。そのうえで、本人が出向元か出向先のどちらかを選びます。
- 標準報酬月額は、出向元と出向先のそれぞれが支払う賃金を合算して決まり、保険料は両社の賃金で按分した金額になります。
- 選んだ会社が健康保険組合に加入している場合は、その健康保険組合にも別途手続きが必要になります。
参考:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」および同ページのリーフレットPDF
在籍出向と転籍出向では、保険の扱いはどう違う?
新人人事部 S郎在籍出向と転籍出向って、何が違うんですか?
社労士 福田いい質問ですね。出向元との雇用関係が続くかどうかで、
保険の扱いも変わってきますよ。
在籍出向は、出向元との雇用関係を残したまま出向先でも働く形です。ここまで見てきた取り扱いは、この在籍出向を前提にしています。一方で転籍出向は、出向元との雇用関係が終了し、出向先(転籍先)と新たに雇用契約を結ぶ形です。雇用関係が一本化されるため、保険の加入先も変わります。
なお、出向元と出向先の両方で同時に働く「兼務出向」という形もありますが、数としては多くありません。ここでは、もっとも一般的な在籍出向を中心に見ていきます。
似た言葉に「派遣」がありますが、派遣は派遣元・派遣先・働く人の三者の関係で、雇用保険や社会保険は派遣元で加入します。出向とは仕組みが異なる点に注意してください。
| 項目 | 在籍出向 | 転籍出向 |
| 出向元との雇用関係 | 継続する(出向元・出向先の両方に在籍) | 終了する(出向先=転籍先と新たに契約) |
| 保険の加入先 | 保険ごとに異なる(労災は出向先、雇用・社会保険は主たる賃金を支払う会社) | 原則として転籍先(出向先)に一本化される |
| 主な手続き | 賃金の支払い方に応じて加入先で手続き(両社から賃金が出る場合、社会保険は二以上事業所勤務届) | 出向元で資格喪失の手続き、転籍先で資格取得の手続き |
あわせて、労働時間や休日、休暇などについて、出向元と出向先のどちらの就業規則を適用するかも、出向契約書で決めておくとよいでしょう。実際に指揮命令を行う出向先の規則に合わせるのが一般的ですが、賃金や退職金など、出向元の制度を引き継ぐ部分もあります。
給与をどちらが支払うかで、加入先はこう変わる
社労士 福田では、給与をどちらが払うかで、
加入先がどう変わるかも見てみましょう。
雇用保険と社会保険は、主たる賃金を支払う会社で加入します。そのため、給与を誰が支払うかによって加入先が変わります。労災保険は、賃金の支払い方にかかわらず、実際に働く出向先で加入します。
| 給与の支払い方 | 労災保険 | 雇用保険 | 社会保険 |
| 出向元が全額支払う | 出向先 | 出向元 | 出向元 |
| 出向先が全額支払う | 出向先 | 出向先 | 出向先 |
| 両社で分担して支払う | 出向先 | 賃金の多い方 | 両社で加入(二以上事業所勤務届) |
両社で分担して支払う場合、社会保険は少し特別です。出向元の資格を続けたまま出向先でも加入し、二以上事業所勤務届を提出します。標準報酬月額は両社の賃金を合算して決まり、保険料は賃金に応じて按分されます。
加入する会社が変わる場合は、出向を開始する日を基準に、出向元での資格喪失と出向先での資格取得の手続きを行います。
なお、出向元へ支払う出向負担金(給与負担金)の税務上の取り扱いは、金額の決め方によって寄付金や消費税の判断が変わる場合があります。この点は社会保険とは別の論点になりますので、詳しくは出向負担金の税務に関する別の記事で解説しています。
出向契約書に書いておきたい項目
新人人事部 S郎事前に決めておくべきことって、ありますか?
社労士 福田出向契約書に書いておくと安心な項目を、最後にまとめておきますね。
出向契約書そのものは保険の手続きではありません。ただし、誰がどの保険に加入し、保険料や給与をどちらが負担するかを契約で決めておくと、後からの認識違いや手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。一般的には、次のような項目を定めておくとよいでしょう。
- 出向の期間と、出向元へ復帰する場合の条件
- 出向先での業務内容・就業場所・指揮命令の関係
- 労働時間・休日・休暇などの就業条件と、どちらの就業規則を適用するか
- 賃金の決定方法と支払者、出向元と出向先の費用負担(出向負担金・給与負担金)
- 賞与・退職金・昇給の取り扱い
- 労災保険・雇用保険・社会保険の加入先と、手続きをどちらが行うかの分担
- 福利厚生や出張旅費など、その他の費用の取り扱い
新人人事部 S郎なかなか複雑ですねぇ。
普段使う事がない知識だし、
忘れてしまいそうです。。
社労士 福田使わない知識は忘れても
仕方ないですよ!
その時はまた今日の話を
思い出してくださいね!
よくあるご質問
- 出向している間、出向元の社会保険はどうなりますか?
-
主たる賃金が出向先に移る場合は、出向元で資格喪失の手続きを行い、出向先で加入します。両社から賃金が支払われる場合は、出向元の資格を続けたまま出向先でも加入し、二以上事業所勤務届を提出します。
- 二以上事業所勤務届を出すと、保険料は二重にかかりますか?
-
二重にはかかりません。両社の賃金を合算して標準報酬月額を決め、その保険料を賃金に応じて按分します。会社ごとに別々の保険料が満額かかるわけではありません。
なお、労災保険・雇用保険の年度更新や申告書の書き方など、労働保険の実務については別の記事でも解説しています。あわせてご確認ください。
出向の保険手続きは、賃金の支払い方や、在籍出向か転籍出向かによって、加入する会社や必要な届出が変わります。自社のケースがどれに当てはまるか迷う場合は、手続きの期限が来る前に確認しておくと安心です。
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