70歳以上の労働者を雇用する際の手続きとは??

こんにちは!
埼玉県新座市の助成金に強い「福田社会保険労務士事務所」代表の福田です!
新座市、朝霞市、志木市、和光市の中小企業様の顧問先企業様を中心に、労務相談や給与計算、経営相談まで幅広くサポートさせていただいております。
本日のテーマは、まだまだ元気な70歳以上の労働者を雇用する際の、労務に関する手続きについてお伝えします。
高年齢者雇用安定法改正による就業機会の変化
新人人事部 S郎うちの会社でも、定年後も働き続けたいという70歳前後の社員が出てきそうです。対応しないといけませんね?
社労士 福田そうですね。最近は法改正で70歳まで働ける環境づくりが企業の努力義務となりましたし、今のうちにしっかり準備を進めておきましょう!
少子高齢化が進む日本では、高齢者の活躍推進が重要なテーマになっています。
実は2025年4月の法改正により、「高年齢者雇用安定法」で65歳までの雇用義務に加え、70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。
これにより、企業は定年を延長したり、再雇用制度を整備したりして、70歳近くまで社員が働ける環境を用意することが求められています。
そんな高齢者を雇用する際に、注意しておきたい労務手続きについて、解説していきたいと思います。
こうした制度変更を背景に、70歳以上の高年齢労働者を雇用・継続雇用するケースも今後増えていくと予想されます。
では、実際に70歳を超える社員を雇用する際、企業の担当者はどのような労務手続きに注意すべきでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
65歳以上も雇用保険の適用対象に
まずは雇用保険についてですが、こちらは65歳以上であっても、以下の適用条件を満たせば「高年齢被保険者」として雇用保険が適用されます。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
※ 1つの事業所において、週の所定労働時間が20時間に満たない場合でも、2つ以上の事業所の合算で20時間以上になるのであれば、適用対象者となります。
こちらに該当する場合は、雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を、管轄のハローワークに提出しなければなりません。
「雇用保険被保険者資格取得届」については、ハローワークのこちらのページをご利用ください。
新人人事部 S郎高齢者でも雇用保険の
対象になるんですね。
全然知りませんでした。
社労士 福田そうなんです!
社会保険との相違点を
しっかりと抑えておくと
良いですよ!
65歳以上の労働者が雇用保険に加入する際の手続き
雇用保険被保険者資格取得届は、雇入日の翌月10日までに管轄のハローワークへ提出することとされています。
届出にあたって注意したいのは、本人の雇用保険被保険者番号の確認です。
65歳以上の方は過去にどこかの企業で雇用保険に加入していた可能性が高く、既に被保険者番号が割り振られている場合があります。そのため、採用時の身元確認や書類記入の際に前職の雇用保険番号を本人に確認することが重要です。
もし本人が番号を失念している場合でも、資格取得届の備考欄に前職の会社名を記載すれば、ハローワーク側で過去の加入履歴を検索して特定してくれることがあります。
- 個人番号(マイナンバー)
- 前職の雇用保険被保険者番号(過去に加入している場合)
- 出勤簿・賃金台帳
新人人事部 S郎65歳を超えて新しく雇用された人も雇用保険に入れるなんて、正直驚きです。そんな高齢の方が失業給付をもらうこともあるんですね。
社労士 福田そうなんです!
高齢者にも雇用保険を適用することで、万一離職した際のセーフティネットを提供できるようになりました。
ちなみに65歳以上の方が失業した場合は、通常の失業手当ではなく高年齢求職者給付金(一時金)が支給される仕組みです。年金を受給していても給付金は併給できますし、受給要件を満たせば何度でも受け取れます。
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の離職者に支給される雇用保険の一時金で、基本手当日額の30日分または50日分(被保険者であった期間により異なる)が一括支給されます。受給には離職前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上あること等の条件が必要です。
高年齢者の退職が決まった際には、会社の担当者として「ハローワークで手続きをすれば給付金がもらえる可能性がある」ことをぜひ本人に案内してあげてください。
引用:厚生労働省「離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>」
複数事業者に雇用される労働者は雇用保険の特例加入が適用
高年齢者の雇用保険に関連して覚えておきたい制度に、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」があります。
これは65歳以上の労働者を対象に、令和4年(2022年)1月から始まった雇用保険の特例的な加入制度です。高年齢者の場合、週20時間未満の短時間勤務だと通常は雇用保険に入れません。
しかし、2つ以上の事業所で勤務する場合に限り、それらの労働時間を合算して20時間以上であれば雇用保険に加入できるようにしたのがマルチジョブホルダー制度です。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
この制度を利用したい高年齢労働者は、本人からハローワークに申し出て手続きを行う必要があります。
事業主からの届出ではなく、労働者本人の申請によって初めて適用される点が通常の雇用保険と異なるポイントです。申し出を行い受理されると、その日以降は特例的に「マルチ高年齢被保険者」として雇用保険に加入し、仮に離職した際には高年齢求職者給付金の支給対象ともなります。
制度導入の背景には、複数の職場で細切れに働く高年齢者にも雇用保険の保障を与えたいという趣旨があります。
例えば、週10時間の仕事を2つ掛け持ちしている70歳の方などは、従来どちらの職場でも雇用保険に入れませんでしたが、現在は本人の希望により加入が可能となりました。
企業側のメリットとしては、従業員が安心して長く働ける環境を提供できる点や、万一離職する際にもセーフティネットがあることで再就職支援につながる点が挙げられます。
一方、事業主には雇用保険料の負担が発生しますので、人件費計画にその分を織り込む必要があります。いずれにせよ、高年齢者の多様な働き方に対応した新しい仕組みとして押さえておきましょう。
新人人事部 S郎例えば、高齢のパートさんがA社とB社で週10時間ずつ働いている場合でも、雇用保険に入れる可能性があるんですね?
社労士 福田はい、その通りです!
これがまさにマルチジョブホルダー制度で、本人の申請を条件に雇用保険に特例加入できる仕組みです。複数の職場で働く高齢者にも手厚く保障する時代になってきたということですね!
70歳以上高年齢者の社会保険手続き
続いて、社会保険について見ていきましょう!
70歳を超える従業員に関しては、厚生年金保険と健康保険(社会保険)で通常の従業員とは異なる取り扱いや手続きが発生します。ここでは、新規に70歳以上の方を雇い入れる場合、在職中の従業員が70歳を迎えた場合、そして70歳超の従業員が退職する場合に分けて、必要な社会保険上の手続きを解説します。
新たに70歳以上高年齢者を雇用した場合の手続き
まず、新たに70歳以上の労働者を採用した場合の手続きです。厚生年金の加入期間は、原則として70歳までとなっています。
そのため、70歳になった時点で、その労働者は厚生年金の被保険者としての資格を失うことになります。
ですが、70歳以上の労働者が、以下の要件を満たしている場合は、「70歳以上被用者」に該当します。
- 70歳以上であること
- 厚生年金の被保険者期間があること
- 厚生年金の適用事業所に勤務する者で、適用除外に該当しないこと
厚生年金には、企業から支給される給与額に応じて、老齢厚生年金を減額するための制度である「在職老齢年金」という制度があります。
この制度を運用するためには、「70歳以上被用者」の情報が必要となりますので、「70歳以上被用者該当届」という手続きを行う必要があるのです。
この手続きについては、70歳の到達日から5日以内に、管轄の年金事務所に提出する必要があります。
「70歳以上被用者該当届」については、日本年金機構のこちらのページをご利用ください。
一方、健康保険については75歳未満であれば引き続き適用されますので、70~74歳の方なら資格取得届を提出して加入手続きを行いましょう。
なお75歳以上の方を新規雇用した場合、後述の通り健康保険の被保険者とはならず後期高齢者医療制度の対象となるため、健康保険の資格取得手続きは不要です。
雇用していた従業員が70歳を迎えた場合の手続き
次に、在職中の従業員が70歳の誕生日を迎えた場合の手続きです。このケースでは、その従業員は誕生日の前日をもって厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。70歳到達時点で企業が行うべき処理は以下の通りです。
- 厚生年金保険の資格喪失(70歳到達)手続き
- 通常、70歳に達した時点で厚生年金保険料の徴収は自動的に停止され、年金事務所側で資格喪失の処理が行われます。ただし、70歳到達時に報酬額の変動があった場合は、企業側で「70歳到達届」(厚生年金保険被保険者資格喪失届と70歳以上被用者該当届が一体となった届出)を提出する必要があります。提出期限は70歳の誕生日の前日から起算して5日以内です。これにより、厚生年金の資格喪失と同時に在職老齢年金の対象者(70歳以上被用者)となったことが正式に処理されます。
- 健康保険の取扱い
- 厚生年金と異なり、健康保険は70歳を過ぎても75歳になるまでは従来どおり被保険者として継続します。そのため、70歳時点で特別な健康保険上の手続きは不要です。引き続き社会保険料(健康保険料)のみ本人と会社で負担します。
以上をまとめると、70歳に達した社員については厚生年金の保険料負担がなくなる一方、引き続き健康保険料の負担は発生します。また本人は老齢年金の受給資格者であれば在職老齢年金制度により年金額が調整されます。その際、会社から提出された70歳以上被用者該当届の情報が年金額の算定に使われる仕組みです。
70歳以上の従業員が退職した場合の手続き
最後に、70歳以上の従業員が退職・離職する場合の手続きです。基本的な退職手続きの流れは他の年代の退職者と同様ですが、高年齢者特有の手続きもあります。
まず、厚生年金関係では、70歳以上で在職していた方が退職した際に「厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を提出します。これは70歳以上被用者として届け出ていた従業員が退職(つまり在職老齢年金の対象から外れる)したことを年金事務所に知らせるための書類です。退職日から5日以内を目安に届け出ましょう。
次に、健康保険関係では、退職日をもってその従業員は健康保険の被保険者資格を失います。
会社は健康保険被保険者資格喪失届を管轄の年金事務所(または健康保険組合)へ提出し、併せて健康保険証を回収して返納する必要があります。特に75歳以上で退職する場合は、その時点で後期高齢者医療制度へ移行しますので、健康保険証および高齢受給者証を回収し、資格喪失日(75歳の誕生日の前日)の翌日から5日以内に保険者へ返納しなければなりません。
「健康保険被保険者資格喪失届」については、日本年金機構のこちらのページをご利用ください。
日本年金機構:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き
新人人事部 S郎70歳を超えた方が退職するときも、年金事務所や健康保険の届出が必要なんですね…。
社労士 福田その通りです。高年齢者だからといって特別難しい手続きが増えるわけではありませんが、通常の退職手続きに加えて年金機構への届出が発生する点は押さえておきましょう。
高年齢者の雇用手続きはプロと連携を
70歳以上の従業員を雇用・継続雇用する際のポイントをまとめると、社会保険では厚生年金が70歳で一区切り(被保険者資格喪失)となり、必要に応じて所定の届出を行うこと、健康保険は75歳まで適用が続くため75歳到達時に資格喪失手続きをすることが重要です。
また、雇用保険は65歳以上でも条件を満たせば適用されるため、高年齢者の採用時には資格取得届を提出し、退職時には給付金の案内も含めたフォローをすると良いでしょう。
新人人事部 S郎今日も勉強になりましたー!
これでいつでも対応できます!
社労士 福田また一つ対応できる手続きが
増えましたね!
お役に立てて良かったです!
なお、高齢者雇用と言えば、忘れていただきたくないのが助成金です!
近年は高年齢者の雇用安定のため、企業向けの支援策も充実しています。例えば65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用推進コース)など、高齢者を継続雇用・積極採用する企業に助成金が支給される制度もあります。

こうした制度も上手に活用すれば、企業の負担軽減や高齢者戦力化の後押しとなるでしょう。
高年齢者の雇用管理には法改正への対応や細かな手続きがつきものですが、社内だけで悩む必要はありません。
社会保険労務士など労務のプロに相談すれば、最新の情報に基づいた適切な手続きや制度活用のアドバイスが得られます。社員が安心して働き続けられる環境を整えるためにも、ぜひ専門家の力も借りながら万全の対応を進めていきましょう。
必要であれば当事務所のサポートもご活用ください。私たちと一緒に、高年齢者が安心して働ける職場づくりを進めていきませんか?
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