遅刻や早退をした従業員の給料って減額できるの??

こんにちは!
埼玉県新座市の助成金に強い「福田社会保険労務士事務所」代表の福田です!
従業員が 遅刻 や 早退 をした場合、その時間分の給料を差し引いても良いのでしょうか?人事担当者として正しく対応できるように、給与控除の基本ルールや計算方法を押さえておきたいところです。
本日は、遅刻・早退時の給与控除について、過去にご相談があった事例を踏まえて、ご覧の皆様にもお役立ていただくために、Q&Aをお届けしたいと思います。
社労士 福田過去のご相談事例を、
皆様の労務管理にも
お役立ていただけたら幸いです!
早退・遅刻控除の考え方
早退・遅刻控除の考え方について、ご相談内容を踏まえて振り返ってみましょう。
Q:たまに遅刻や早退をする従業員がいるのですが、このような場合にその時間分の給料を減額することはできるのでしょうか?
新人人事部 S郎これはできると思いますが、
どのような計算式になるのかが
ちょっと分からないです。。
社労士 福田控除しても問題ないことを
ご存じなのはさすがです!
計算方法についても、
一緒に見ていきましょう!
A:給料というのは、労働契約に基づいて従業員が会社に労働を提供し、その対価として支払われるものです。
ですので、労働を提供しなかった場合、会社は給料を支払う義務がなくなります。
遅刻や早退、欠勤等をした場合というのは、本来提供するはずだったその時間分の労働力を提供しなかったということになります。
ですので、その時間分の給料の支払い義務は生じないということになります。
このようなものを「ノーワーク・ノーペイの原則」と言います。
上記の通り、ご質問の遅刻や早退の場合に、その時間分を減額することは問題ありません。(これは正社員だけでなくパートやアルバイトなどすべての労働者に適用されます。)
ただし、遅刻等のペナルティーとして懲戒規定を設け、その時間分以上の減額をする場合には注意が必要です!
労働基準法には、以下のような「減給の制裁」という条文があります。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
労働基準法 第91条 制裁規定の制限
上記を分かりやすくすると以下のようになります。
- 1回の行為については、賃金の半日分まで
- 複数回の行為については、賃金計算期間の賃金総額の10分の1まで
ただし、この原則が適用されるのは労働者の都合による欠勤・早退・遅刻の場合です。会社側の事情や責任で労働者が働けなかった場合には、ノーワーク・ノーペイは当てはまりません。
例えば会社の設備トラブルで早退させた場合などは、会社はその時間の給与を支払う義務を負います。※会社都合の休業の場合は労働基準法により休業手当(平均賃金の6割以上)の支払いが必要となる点にも注意しましょう。
なお、遅刻・早退だけでなく欠勤(一日まるごと休んだ場合)についても扱いは基本的に同じで、ノーワーク・ノーペイの原則に従い給与を控除できます。いずれも法律上はっきりとした計算方法の定めがないため、自社の就業規則に控除の取扱いを定めておくことが重要です。
欠勤・早退・遅刻の取り扱いの違い
結論から言えば、欠勤・早退・遅刻の給与計算上の取り扱いに大きな違いはありません。どれもノーワーク・ノーペイの原則に従い、働かなかった分の賃金を控除するという点では共通です。ただし、法律に具体的なルールがない分、会社ごとに就業規則で細かなルールを定めておくことがトラブル防止のために大切です。
就業規則に明記しておくべき事項の例として、以下のようなポイントが挙げられます。
- 欠勤・早退・遅刻の事前連絡や申告方法(誰に・いつまでに報告するか 等)
- 当日になって突発的に欠勤・遅刻・早退が発生した場合の勤怠管理上の扱い
- 遅刻・早退が発生した際の給与控除の計算方法(控除対象とする賃金の範囲や計算式)
- 遅刻とみなさないケースの条件(例:公共交通機関の遅延証明がある場合は遅刻扱いしない など)
上記のようなルールを就業規則で定め、社員に周知しておけば、「勝手に給与を控除された」といった労使間のトラブルを防ぐことができます。
就業規則に規定がない場合でもノーワーク・ノーペイに基づく控除自体は可能と考えられますが、明文化されていないと従業員の納得を得られず揉める可能性があります。ルールの明確化と周知徹底を図り、会社・従業員双方が納得できる運用にしましょう。
早退・遅刻控除の計算方法
早退・遅刻控除の計算方法について解説していきます。遅刻等の時間分を減額する場合、時給制であれば簡単に計算できると思いますが、月給制ですと分からないという方も多いかと思います。
就業規則に規定があればそれに従う形となりますが、一般的な給与計算の方法としては、以下のような計算式となります。
遅刻早退控除単価 = 給与月額 ÷ 1月当たりの平均所定労働時間 × 遅刻や早退の時間
※ 1月当たりの平均所定労働時間 = 365日 – 年間休日 ÷ 12ヶ月 × 1日の所定労働時間
例えば、年間休日が125日の会社で、月給30万円、1日の所定労働時間が8時間の方の場合は、以下のようになります。
300,000 ÷ (365 – 125 ÷ 12 × 8)= 1,875
1,875円 × 遅刻した時間分を控除するということになります。
新人人事部 S郎計算式は曖昧だったので、
とても勉強になりました!
社労士 福田給与計算では結構頻繁に
使うことがあると思うので
しっかりと覚えておいて
くださいね!
このように月給制でもまず時給換算してから控除額を算出すれば、遅刻や早退の時間分だけ給与カットすることができます。
控除に含める給与の範囲
遅刻・早退の控除計算の対象にどこまでの給与要素を含めるかは、会社によって扱いが異なります。一般的には基本給をベースに控除額を計算しますが、各種手当については扱いが分かれます。営業手当など業務に直接関係する手当を含めて計算する会社もあれば、住宅手当・家族手当など生活補助的な手当は控除に含めない会社もあります。法律上どの手当を含めるべきか決まりはありませんが、生活保障的な手当は欠勤控除の対象にしないほうが望ましいとの考え方もあります。自社の給与体系に応じて合理的なルールを定め、就業規則に明記しておきましょう。
早退・遅刻控除を計算するときの注意点
早退・遅刻分の給与を控除する際には、以下の点に注意が必要です。
- 控除方法の就業規則への明記と周知
- 控除額は1分単位で計算すること
- 早退・遅刻分以上の給与を控除しないこと
- 控除できない給与形態があることに注意
- 遅刻と残業を相殺しないこと
それでは、それぞれの注意点について詳しく説明します。
早退・遅刻控除の方法を就業規則に明記・周知する
まず大前提として、遅刻や早退の控除方法を就業規則に明記し、従業員に周知しておく必要があります。会社側の裁量で勝手に給与を減額すると、「知らないうちに給料を引かれた!」と従業員が不満を抱き、信頼関係を損ねる恐れがあります。就業規則などにきちんと計算方法や控除の条件を定めていれば、会社も従業員もルールに則って対応できます。
就業規則の変更によって控除方法を変更する場合も同様で、変更内容や給与への影響を事前に知らせることが必要です。いずれにしても、社内ルールとして明文化し周知しておくことで不要なトラブルを防ぎ、円滑な勤怠・給与管理につなげましょう。
控除額は1分単位で計算する
早退・遅刻による給与控除額は、必ず実際の発生時間分(1分単位)で計算します。切りの良い時間単位に繰り上げて計算することは認められません。例えば「遅刻3分だから15分分の賃金を差し引く」といった15分単位の丸めは、労働基準法や民法の趣旨に反する違法な扱いとなってしまいます。
これは、遅刻した3分以外の12分間は本来労働者が働いた時間であり、その分の賃金は支払われるべきだからです。働いていない時間以上に給与を控除することは許されません。したがって、遅刻・早退の控除は1分でも発生した分だけをカウントし、細かく計算しましょう。
早退・遅刻分以上を控除してはいけない
当たり前のことですが、遅刻・早退した分を超える金額の控除をしてはいけません。計算上出てきた控除額については、1円未満の端数が出た場合は切り捨て処理とします。切り上げてしまうと実際に働いていない時間以上の給与を差し引くことになり、ノーワーク・ノーペイの原則を超えて労働者に不利益を与えることになるためです。
例えば、計算によって312円と50銭の控除額になった場合、50銭部分は切り捨てて312円のみ控除します。これを50銭切り上げて313円控除してしまうと、本来支払われるべき50銭分の賃金を不当に差し引くことになり違法となります。同様に、時間の切り上げも厳禁です。常に実際の未就労時間分までにとどめ、厳密に計算した控除額のみを減額しましょう。
給与形態によっては控除できない
遅刻や早退が発生しても、給与形態によっては給与を控除できないケースがあります。控除額を計算する際は、従業員ごとの雇用形態・給与形態を確認し、正しい方法で行いましょう。代表的な給与体系ごとの扱いは次の通りです。
月給制
通常「月給制」と言われる場合、毎月の給与額が固定で支給される形態を指します。特に「完全月給制」では、欠勤や遅刻・早退があっても給与が減額されない契約になっているため、その分を給与から控除することはできません。原則として、完全月給制の従業員に対して遅刻・早退控除(減給)は不可となります。
ただし、現実には「月給制」と言っても日給月給制や月給日給制と呼ばれる形態になっているケースがほとんどです。これらは形式上は月給払いですが、欠勤や遅刻が発生した場合に日割り・時間割計算で給与を控除できる仕組みです。
- 日給月給制:月給制だが、遅刻・早退・欠勤した場合には基本給や手当を含め月給から差し引く形態
- 月給日給制:月給制だが、遅刻・早退・欠勤した場合には基本給のみ月給から差し引く形態
多くの正社員は実質これらの日給月給制に近い運用となっており、就業規則上も「欠勤した場合はその日数分の給与を控除する」旨の規定が置かれているものです。したがって、一般的な月給制社員であれば遅刻・早退分の給与控除は可能と言えます。ただし完全月給制(例:役員報酬のように欠勤控除しない約束の給与)の場合は控除できない点に留意してください。
なお、日給制(日給月給ではなく、働いた日数分だけ日給を支払う形)や時給制の場合は、もともと働いた時間・日数に応じて賃金が発生するので、遅刻や早退をした分はそのまま支給額が減ることになり特別な控除計算は不要です。
年俸制
年俸制の従業員についても、就業規則に控除方法を明記していれば遅刻・早退控除は可能です。多くの場合は年俸額を年間の所定労働時間で割り戻して1時間あたり(または1日あたり)の金額を算出し、控除額を計算します。
例えば年俸600万円、年間所定労働日数245日(年間休日120日)、1日8時間勤務というケースなら、年間の所定労働時間は 245日×8時間=1,960時間 です。年俸600万円を1,960時間で割ると1時間あたり約3,061円となります。遅刻や早退をした場合は、この1時間単価に欠勤時間を乗じて控除額を算出します。年俸制の場合も月給制と同様、会社ごとにルールを定めておくことで対応可能です。
歩合給制
歩合給制(完全出来高制)の場合、給与が労働時間ではなく成果に応じて支払われるため、基本的に遅刻・早退による賃金控除の概念がありません。働かなかった分は成果が減るだけで給与も減るので、「控除」という処理をしなくても実質的にノーワーク・ノーペイが実現されています。
ただし、歩合給制でも基本給部分が別途支給されているケースでは、その基本給部分について遅刻・早退控除を行うことがあります。例えば基本給+歩合給の給与体系なら、基本給を時給換算して控除額を計算し、歩合給部分はそのままとする扱いです。いずれにせよ、歩合給のみで構成される給与では控除のしようがないため、就業規則で明確に決めた上で運用してください。
フレックスタイム制
フレックスタイム制では、労働者が一定の清算期間内で総労働時間さえ満たせば良いという働き方になります。したがって、清算期間の総労働時間を満たしている限りは、途中で何時間遅刻や早退をしようと給与を控除することはできません。極端な例を言えば、フレックス制社員がある日2時間遅刻しても、別の日にその2時間を取り戻して清算期間トータルで必要時間を働いていれば、ノーワーク・ノーペイには該当しないということです。
一方で、清算期間終了時点で総労働時間が不足している場合は、その不足分の時間について給与控除が発生します。フレックス制だからといって不足時間を放置できるわけではありませんので、通常の欠勤控除と同様に扱います(会社によっては清算期間の不足時間を次月に繰り越して相殺できる制度を設けている場合もあります)。
また、コアタイム付きのフレックスタイム制の場合でも考え方は同様で、最終的に総労働時間を満たしていれば控除は行わないのが基本です。ただしコアタイムに遅刻・早退したこと自体は就業規則違反となり得るため、その点は別途注意が必要です(後述の懲戒処分の対象となる可能性があります)。なお、フレックス制でも就業日そのものの振替は認められていません。そのため所定労働日に全く出勤しなかった場合は、たとえ他の日で時間を埋め合わせても形式上欠勤扱いとなり、給与も日単位の欠勤控除対象となります。
残業との相殺はできない
「遅刻した分、あとで残業して取り返してもらえば控除しなくて済むのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、早退・遅刻分の未就労時間と残業時間を相殺することは認められないのが原則です。
新人人事部 S郎遅刻した分をその日の残業で穴埋めしてもらえば、給与を引かなくてもいいですよね?
社労士 福田それは要注意です。労働者の同意なしに遅刻と残業を相殺することはできませんし、仮に同意があっても同じ日に遅刻分を取り戻す形で働かせないといけません。翌日以降に穴埋めさせるのは違法になります。さらに、その日トータルの労働時間が8時間を超えれば残業代も支払わなければならず、相殺にはなりませんよ。
基本的に所定労働時間を超える労働には残業代(時間外割増賃金)の支払い義務が生じます。したがって、遅刻した分だけ定時後に働かせても、その日の労働時間が法定労働時間内(8時間以内)に収まらない限り時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。結果的に会社は遅刻時間相当の基本給を差し引けても、その分以上の割増賃金を支払うことになり不合理です。
また、別の日に残業させて埋め合わせるような扱いは労働時間の適正な管理に反し違法となります。変形労働時間制など特別な制度を導入している場合を除き、遅刻・早退分の時間調整は基本的に同一労働日内で考え、安易な相殺はしないようにしましょう。
正確な勤怠管理でトラブル防止を!
早退・遅刻時の給与控除についてまとめると、「働いていない分の給与は支払わない(ノーワーク・ノーペイ)」という原則に基づいて適切に控除することが重要です。その際、就業規則で計算方法やルールを明確に定めて周知し、1分単位で正確に計算することで従業員とのトラブルを防げます。逆に、ルールが不明確なまま独自判断で減額すると、労働基準法違反や従業員からの不信感につながるリスクがあります。
また、給与形態によって控除可否が異なる点や、安易な相殺・懲戒減給が禁物である点にも注意が必要です。特に昨今は勤怠管理システムやクラウド型の給与計算ソフトも普及しており、そうしたツールを活用すれば遅刻控除の自動計算やミス防止も可能です。自社のルールに沿ってシステムを設定しておけば、遅刻・早退の控除額を正確かつ効率的に算出できるでしょう。
人事労務担当者としては、日々の勤怠データを正確に把握し、就業規則に即した給与計算を行うことが求められます。もし早退・遅刻への対応や就業規則の整備について不安がある場合は、専門家に相談することも検討してください。当事務所ではこうした労務管理に関するご相談を随時承っております。正確な給与計算と職場ルールの整備によって無用なトラブルを防ぎ、安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。お気軽にお問い合わせいただければ、貴社の状況に合わせた適切なアドバイスや支援をご提供いたします。
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